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帰国生入試の基礎知識

はじめに

海外在住の保護者の皆様にとって、帰国中学受験は子どもの将来を左右する重要な選択の一つです。帰国生入試は、一般の中学受験とは異なる特徴を持ち、特殊なルールや要件が求められるため、しっかりとした情報収集と準備が必要です。本記事では、帰国生入試に関する基礎知識を整理し、2024年度以降の入試動向を踏まえた最新の情報をお伝えします。

一般的な帰国生資格要件

  1. 海外滞在期間
    • 一定期間の海外滞在が必要:多くの学校では、帰国生として認定されるために、通常は「海外に1年以上滞在していた」ことが条件とされています。この期間の計算方法は学校によって異なる場合があるため注意が必要です。
  2. 帰国時期
    • 帰国後の期間制限:帰国後、一定期間以内に受験する必要があります。たとえば、「帰国後3年以内」という条件がよく見られます。この期間を超えてしまうと、帰国生枠での受験ができなくなるため、帰国のタイミングには十分注意する必要があります。
  3. 証明書類の提出
    • 海外滞在を証明する書類:パスポートの出入国スタンプや、現地校の在籍証明書、成績証明書などの提出が求められます。これらの書類をもとに、帰国生資格が確認されます。

2024年度以降の東京都の帰国生資格要件の厳格化

2024年度の入試から、東京都の帰国生入試資格要件が厳格化されました。主な変更点は以下の通りです。

  • 「海外滞在1年以上、帰国後3年以内」の条件:これにより、以前は認められていた国内のインターナショナルスクールに通う生徒や早期帰国した生徒が、帰国生枠で受験することが難しくなりました。
  • 英語入試への影響:この厳格化により、資格を満たさない生徒は、2月以降に行われる英語入試に集中することになります。

学校ごとの柔軟な対応

一部の学校では、帰国生資格要件に対して柔軟に対応してくれるケースもあります。例えば、滞在期間や帰国時期が規定に少し満たない場合でも、個別に相談することで受験が認められる場合もあります。したがって、条件を満たしていない場合でも、志望校に直接問い合わせることをお勧めします。また、上記の厳格化は東京都の私学となっており、神奈川や千葉の私学については、比較的、資格認定は学校の裁量が大きいといえます。

帰国生入試の形式と学校一覧

帰国生入試には、いくつかの異なる形式があります。各学校はそれぞれの方針に基づき、帰国生向けに特別な試験を設けています。以下に、主な入試形式とそれに該当する学校を一覧化します。

1. 英語型

  • 特徴:英語圏の現地校やインターナショナルスクールに通う生徒向けの形式。英語力を中心に、日本語や他の基礎科目も評価されることが多い。
  • 代表的な学校
    • 渋谷教育学園幕張中学校
    • 三田国際学園中学校
    • かえつ有明中学校
    • サレジアン国際学園中学校
    • サレジアン国際学園世田谷中学校
    • 攻玉社中学校
    • 洗足学園中学校(A方式)
    • 頌栄女子学院中学校
    • 大妻中野中学校

2. 2科(英語・算数)型

  • 特徴:算数に加え、英語力を評価する試験が課される形式。帰国生にとっては国語がなく、英語算数で勝負したい受験生にぴったりの入試です。大妻や桐光学園は英語・国語の組み合わせでも選抜可能。
  • 代表的な学校
    • 聖光学院中学校
    • 東京都市大学等々力中学校
    • 桐光学園中学校
    • 豊島岡女子学園中学校
    • 大妻中学校
    • 共立女子中学校

3. 2科(国語・算数)型

  • 特徴: 海外の学習事情に配慮し、社会・理科の試験を省略した形式。国語と算数のみでの受験が可能で、問題も比較的易しいものが多い。
  • 代表的な学校:
    • 渋谷教育学園渋谷中学校
    • 広尾学園中学校(医進・サイエンス、本科、SG)
    • 広尾学園小石川中学校(本科、SG)
    • サレジアン国際学園中学校(SG)
    • かえつ有明中学校(R)
    • 聖光学院中学校
    • 海城中学校
    • 立教池袋中学校
    • 学習院中等科
    • 攻玉社中学校
    • 学習院女子中等科
    • 共立女子中学校
    • 大妻中学校
    • 大妻中野中学校
    • 立教女学院中学校 ※2025年度より一般入試と同一問題

4. 3科(国語・算数・英語)型

  • 特徴:国語・算数に加え、英語力を評価する試験が課される形式。帰国生にとっては英語力を活かせる大きなチャンスだが、同時に国語や算数の学力も求められる。
  • 代表的な学校
    • 慶應義塾湘南藤沢中等部
    • 渋谷教育学園渋谷中学校
    • 広尾学園中学校(インターAG)
    • 広尾学園小石川中学校(インターAG)
    • 三田国際学園中学校
    • 開智日本橋学園中学校
    • 成蹊中学校
    • 市川中学校
    • 東邦大学付属東邦中学校
    • 海城中学校
    • 暁星中学校
    • 東京都市大学付属中学校
    • 頌栄女子学院中学校
    • 洗足学園中学校(B方式)
    • 白百合学園中学校

5. 4科(国語・算数・社会・理科)型

  • 特徴: 国内の一般入試と同じ日程で行われ、同一の試験内容が課される。帰国生は基準点が調整される場合があるが、国内の一般入試とほぼ同等の学力が求められる。
  • 代表的な学校
    • 慶應義塾湘南藤沢中等部
    • 早稲田実業学校中等部
    • 東京都市大学付属中学校
    • 本郷中学校
    • 巣鴨中学校
    • 城北中学校
    • 豊島岡女子学園中学校
    • 鷗友学園女子中学校

6. 独自型

  • 特徴: 各学校が独自の試験形式を採用。適性検査や作文、面接のみでの選考が行われることが多く、生徒の個性や特性を重視した選抜が行われる。
  • 代表的な学校:
    • 東京学芸大学附属国際中等教育学校(作文・適性試験+面接+書類審査)
    • 東京都立立川国際中等教育学校(作文+面接)
    • 東京都立白鷗高等学校附属中学校(作文+面接)

コロナ禍の影響と入試の動向

コロナ禍の影響で、帰国生入試の受験者数は一時的に減少し、現在は頭打ちの状況が続いています。しかし、人気のある一部の学校では、依然として入試の難易度が高くなっており、超難関校になると、英検1級を持っていても不合格になる生徒が増えています。

さらに、海外学習塾の充実やオンライン学習の定着も背景にあります。その結果、国内の受験対策と同じレベルの準備を行う受験生が増えており、競争が激化しています。特に中学受験の算数や国語についても、より高いレベルの対策が求められるようになっている傾向があります。

英語入試の拡大と影響

現在、英語入試を実施している学校は首都圏で140校を超えており、帰国子女でなくても受験が可能です。これにより、英語力を持つ生徒の受験機会が広がっています。特に慶應義塾湘南藤沢中等部は、帰国生入試と同日に英語入試を実施しており、2024年度からは豊島岡女子学園中学校も英語資格入試を導入する予定です。

豊島岡女子学園中の英語入試導入は、国内のインターナショナルスクールや早期帰国組の生徒にとって新たなチャンスを提供するものです。英検準1級や2級を取得している生徒が、英語力を活かして難関校を目指すケースが増えると予想されます。特に、御三家と呼ばれる難関校を目指す生徒にとっては、小学校低学年に帰国したいわゆる『隠れ帰国』の生徒も多く、英語力を評価される入試が増えることは選択肢が増えることは歓迎すべきことです。

一方で、英語力を持ちながらも、あえて英語を使わず4科目での受験を選ぶ生徒も一定数存在します。英語力にとらわれず、本当に行きたい学校に必要な科目を準備する生徒は以前から一定数います。

豊島岡女子学園中学校の英語入試と今後の展望

豊島岡女子学園中学校が2024年度から英語入試を導入することは、大きな注目を集めています。この動きは、これまで英語力を重視してきた学校の入試に新たな波を起こす可能性があります。

ちなみに、洗足学園中学校の「帰国B方式」では、英語力が重視される一方で、豊島岡では算数が重視される傾向があります。豊島岡の英語入試では、英検2級と準1級の差がわずか10点(300点中)しかなく、実質的には算数の得点が合否を大きく左右することになるでしょう。これにより、高い英語力を持ちながら算数が得意な生徒にとっては、非常に挑戦しがいのある入試といえます。

まとめ

帰国中学受験は、従来の一般入試とは異なる特性を持ち、慎重な準備と情報収集が求められます。特に、2024年度以降の入試動向や東京都の帰国子女入試資格の厳格化、そして英語入試の拡大は、帰国生にとって新たなチャンスと同時に課題をもたらしています。

各家庭が子どもの特性や学力を最大限に活かせるよう、適切な学校選びと受験対策を進めることが重要です。帰国生としての経験を武器に、日本での新しい学びを充実させるために、今からしっかりと準備を整え、志望校合格に向けて最善を尽くしましょう。

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